いわき明星大学

大学案内

学長告示(平成27年度 学位記授与式)

平成27年度学位記授与式 学長告示(平成28年3月19日)

それぞれの学部、大学院において無事教育課程を修了して学士あるいは修士の称号を得て卒業を迎えた231名の皆様に心からお慶び申し上げます。また保護者の皆様におかれては、御子弟の本日の晴れ姿をご覧になって感慨もひとしおのこととお祝い申し上げます。
さらに、ここに御列席いただいた来賓、関係者の皆様にはいわき明星大学を代表して厚く御礼申し上げます。

大学は社会へ旅立つためのいわばプラットホームです。大学ではいきおい学力、特に知識が評価の対象となりますが、卒業される皆様が本学で学んだことは知識だけではなかったはずです。特定の科目として履修はしていないとしても、態度や技能、課題解決力などよく言われる「生きる力」をいずれかの局面あるいは何らかの機会を得て身につけたものと思います。

私は生物学の専門家ではありませんが、一般書店でも販売している生物学の啓蒙書の類には時々目を通すことがあります。2年ほど前に生物の進化、生存という観点から戦略は人間社会だけのものではないと解説した「弱者の戦略」という著作に接する機会がありました。著者の稲垣栄洋(いながき ひでひろ)氏は雑草生態学を専門とする方ですが、大変興味深い、これから社会に旅立つ皆様にも何がしかの教訓やヒントが書かれていますが、多数の事例の中から1、2の例を紹介いたします。

アゲハチョウの擬態は巧みで、成長に合わせて次々に擬態を変化させているのだそうです。卵からかえった小さな幼虫の黒と白のまだらは鳥の糞に似ているので、鳥はこれを食べない。そして幼虫が大きく成長すると、糞に似た黒と白のまだらだけでは大きすぎて鳥をだますことができないので、今度は鮮やかな緑色の筋の入った模様になって葉っぱに擬態する。何かに姿を似せるといっても、一通りでは芸がない。アゲハチョウは成長のステージに対応させて生存しているのです。
また一般に生物は平均的な大きさの個体がたくさんいて、平均から離れるにしたがって数が少なくなります。しかしカブトムシは違い、角の大きな個体と、角の小さな個体が存在し、その中間が少ない。これは中間的な、言ってみれば中途半端に大きな角のカブトムシは角の大きなカブトムシと戦って敗れ、子孫を残すことができない。一方小さな角のカブトムシは大きな角のカブトムシと戦うことができないため、大きな角をもつカブトムシとの生活活動の時間帯をずらすことによって餌を獲得し、交尾しそして生存しているのです。つまり「大きいこと」が勝ち残る戦略であるのと同じように、「小さいこと」もまた有効な戦略ということになります。中途半端は淘汰されることを指しています。

例を挙げるのはこの辺で止めますが、アゲハチョウの擬態もカブトムシの角の大きさも、「最も強い者が生き残るのではなく、最も賢い者が生き延びるのでもない。唯一生き残るのは変化できる者である」というダーウィンの言葉に集約されます。人類の進化をたどれば、私達は常に弱者であったが、弱者は変化に対応して、困難を乗り越えて現在万物の霊長として君臨しています。「私達は弱い存在である。だからこそ、強く生きることができるのである」という稲垣氏の著作のあとがきと「一番強い者は、自分の弱さを忘れない者だ」という格言をもって、学窓を離れ社会人として活躍することになる皆様へのはなむけの言葉といたします。

学長からの告辞の結びになりますが、いわき明星大学から輝かしい将来に旅立つ卒業生の皆様、校訓である「健康・真面目・努力」を信条として、今後とも「体を鍛え、心を磨き努力し、そして色々な変化に対応する。いや、必ず変化できる」ことをお願いいたします。重ねて申し上げますが、ご卒業おめでとうございます