いわき明星大学

大学案内

学長告辞(平成28年度 学位記授与式)

平成28年度学位記授与式 学長告辞(平成29年3月20日)

 
 それぞれの学部、大学院において無事教育課程を修了して学士あるいは修士の称号を得て卒業を迎えた201名の皆様に心からお慶び申し上げます。また保護者の皆様におかれましては、御子弟の本日の晴れ姿をご覧になって感慨もひとしおのこととお祝い申し上げます。さらに、ここに御列席いただいた来賓、関係者の皆様にはいわき明星大学を代表して厚く御礼申し上げます。
 
 本日卒業される皆様の大多数は、平成23年3月11日の東日本大震災の時は、高校生で多感なそして将来のいろいろな夢を膨らませていた時期であったのではないかと想像いたします。それが大震災により家庭環境が一変、あるいは将来に対する大きな不安を抱える中で本学への進学を選択していただいたことをまず感謝したいと思います。
 とくに薬学部5期生となる今年の卒業生諸君は、入学式も延期となり、さらに入学したもののはたして通常どおりの授業や進級ができるのかとさえ危惧されたのではないでしょうか。漠とした不安と謂れ無き風評下の学習環境で過ごした4年間あるいは6年間であったかもしれませんが、逆境は試練であり、試練は成長の分岐点でもあるのです。
 
 ハンセン病という病気があります。ハンセン病はかつて癩病と呼ばれ、顔や手足に醜形をきたすことがある疾患であるため、無知に根差したそれこそ謂れ無き偏見や敵意によって長い間迫害をうけました。
 このハンセン病の救済に精神科医として大きな貢献をした神谷美恵子先生という方がいらっしゃいました。神谷先生はジュネーブで教育を受けた今でいう帰国子女で、読み書き、思考はフランス語が一番楽であったそうです。フランス語ばかりでなく日米開戦で途絶したものの大学教育を米国で受けており、英語も堪能、イタリア語、ドイツ語、ギリシャ語も解し、多言語による翻訳もされています。
 この神谷先生は、「生きがいという言葉は、日本語だけにあるらしい。こういう言葉があるということは、日本人の心の生活のなかで、生きる目的や意味や価値が、問題にされて来たことを示すものであろう」と述べています。また神谷先生は生きがいについての著作もあり、次のような言葉も残っています。
「人間から生きがいを、奪うほど残酷なことはなく、人間に生きがいをあたえるほど、大きな愛はない」、「生きがい感は幸福感の一種で、しかもその一番大きなものともいえる」というものです。
 
 そこで私が卒業する皆様に申し上げたいことは、生きがいとは幸福感の一種であって、しかもその一番大きなものだとしても、人に誇る必要もなく、他人から配給してもらうものでもなく自分で見つけるものだということです。

 「宮本武蔵」や「新・平家物語」の作者で国民文学作家と言われた吉川英治氏が若い職工時代に詠んだ川柳に、「仕事した 俺にはあるぞ 夕涼み」があります。なんとも慎ましい喜び、生きがいだと思いますが、労働に明け暮れていた当時の吉村英治氏の実感が十分想像できます。
 つまり生きがいとは何かを知りたいと思うならば、今手にしている職業や仕事に自分の可能性を試してみることです。困難が多く、苦しい努力を続けた結果、その仕事を達成したとき、自然に湧き上がってきた充実感や自己満足、それが生きがいではないでしょうか。生きがいはそれぞれの仕事や生活の中に必ず埋蔵されています。学窓から離れ社会で活躍する卒業生の皆様、ぜひ生きがいを見つけていただきたいと思います。
 
 学長からの告辞の結びになりますが、いわき明星大学から輝かしい将来に旅立つ卒業生の皆様、校訓である「健康・真面目・努力」を信条として、今後とも「体を鍛え、心を磨き努力し、そして生きがいを見つける」ことをお願いいたします。重ねて申し上げますが、ご卒業おめでとうございます。