いわき明星大学

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学長告辞(平成29年度 学位記授与式)

平成29年度 学位記授与式 学長告示(平成30年3月21日)

 

 それぞれの学部、大学院において無事教育課程を修了して学士あるいは修士の称号を得て卒業を迎えた209名の皆様に心からお慶び申し上げます。また保護者の皆様におかれましては、御子弟の本日の晴れ姿をご覧になって感慨もひとしおのこととお祝い申し上げます。


 さらに、ここに御列席いただいた来賓、関係者の皆様にはいわき明星大学を代表して厚く御礼申し上げます。

 

 本日卒業する人文学部、科学技術学部の皆様の大多数は、両学部の最後の卒業生として入学しました。人文学部は教養学部に改組転換されましたが、科学技術学部については後継に相当する学部が存在せず、先行きの不安をいだいたままの入学であったかと想像します。学位授与式という晴れの場に相応しいとは思いませんが、改めてお詫びいたします。
 
 また薬学部においては、まだ卒業生がいない中、東日本大震災と原子力発電所事故の影響がおそらく最も大きかった時期に本学を選択するには大きな決断を必要としたに違いありません。いずれにしても漠とした不安と謂れ無き風評下の学習環境で過ごした4年間あるいは6年間であったかもしれませんが、逆境は試練であり、試練は成長の分岐点でもあるのです。
 
 東日本大震災と原子力発電所事故は地域にとって重大な危機であり、大学にとっても大学の存続が問われるような危機でした。ロックフェラー財団理事長で高名な女性心理学者であるジュディス・ロディン氏が危機からの「復元力(レジリエンスResilience)」について書いた著書によれば、レジリエンスを身につけるには、(1)知覚、(2)多様性、(3)統合、(4)自動調整、(5)適応の五つの機能が必要であるとされています。
 
 (1)知覚は、状況認識力をいかに高めるかということ、(2)多様性は、多様なオプションを確保すること、(3)統合は、多様性と同時にその多様性を統合して散乱を避けること、(4)自動調整は、一つのことが破綻してもそれを食い止める自動調整機能を内装していること、(5)適応は、破裂の衝撃を回避し、あるいは減殺するために破裂に先立って自ら変化することだと記述されています。
 
 原子力発電所事故の原因は裁判案件ともなっているため迂闊なことはいえませんが、このロディン氏のいうところのレジリエンスの五つの機能のすべてとはいわないまでも、このうちのせめて二つの機能が働いていればわれわれが不幸にも経験した大厄災は防げていた可能性があると思います。この著作におけるレジリエンスは企業や地域や国家の破裂について述べたことなのですが、個人についても複眼的な視野をもって情報収集するとともに情報を吟味し、事にあたっては常に自省(自制)し、変化に適応することが重要であるということを説いているのでしょう。
 
ところで、リーン・イン「lean in 」という言葉があります。リーン・インは「勇気を出して一歩踏み出そう、身を乗り出そう」というメッセージで、フェイスブックの最高執行責任者であるシェリル・サンドバーグ氏が広めたもので、元来はサンドバーグ氏のベストセラー著書の題名です。副題は女性、仕事、リーダーへの意欲で、女性が社会で活躍するためには、女性も勇気を持って一歩踏み出そうという内容です。
 
 サンドバーグ氏はリーン・インに続く二冊目の著作「オプションB(次善の選択肢)」の中で、先に述べたレジリエンス(復元力、回復する力)について多くのページを割いています。
 同氏はこの著作の中で、次のように述べています。私は「レジリエンス」とは、苦しみに耐える力だと思っていた。だから、自分にその力がどれくらいあるのか知りたかった。でもアダム(彼女の夫が急死した直後、彼女の相談にのった心理学者の友人)は、レジリエンスの量はあらかじめ決まっているのではない、むしろどうすればレジリエンスを高められるかを考えるほうが大事だという。レジリエンスとは、逆境が襲いかかってきたときにどれだけ力強く、すばやく立ち直れるかを決める力であり、自分で鍛えることができる。それはめげない、へこたれないといった精神論ではない。精神を支える力を育むことなのだ。
 
 本日、いわき明星大学という学窓を離れ、社会に歩みだす諸君は、ぜひリーン・イン勇気を出して一歩踏み出してください。社会では予想できないような危機や苦難に遭遇するかもしれませんが、レジリエンスを磨いて危機や苦難に立ち向かってくれるものと信じています。と同時に先に述べたロックフェラー財団理事長のジュディス・ロディン氏が「よい危機を使い捨てにしない」と語っていることもぜひ紹介しておきます。
 
 学長からの告辞の結びになりますが、いわき明星大学から輝かしい将来に旅立つ卒業生の皆様、校訓である「健康・真面目・努力」を信条として、今後とも「体を鍛え、心を磨き努力し、そしてレジリエンスを高める」ことをお願いいたします。重ねて申し上げますが、ご卒業おめでとうございます。
平成30年3月21日
いわき明星大学
学長 山崎洋次