世界宗教の社会学入門 第6回 (2002/11/07)
なぜ仏教はインドから消えたのか
テキスト:橋爪大三郎「世界がわかる宗教社会学入門」p. 127-145
1. 現代インド人から忘れられた仏教
イギリス人による廃墟ルンビニ(ブッダ生誕地)の発掘、仏教は政治権力者(アショーカ)によって世界宗教となり、政治権力者(イスラム王朝)によってインドから消し去られた。特権知識人起源の宗教として、仏教は平民大衆の宗教性に対する無関心であった。大衆の儀式的呪術的ニーズはヒンドゥー教のバラモンが担ってきた。仏教の特徴(模範預言、知的救済、無神論、不殺生)
2. 仏教とは
通俗的には... ブッダ(シャカ)が始めた慈悲と悟りの救済宗教です。仏教に神は存在せず、かわりに宇宙の秩序(ダルマ)や法則(輪廻転生、因果応報)がありす。生命に対するあわれみ(アヒムサー)や大衆に対するあわれみ(慈悲)を教えるとともにこの世の苦しみや無意味から救われるために知的な瞑想によって悟りを得ることを教えます。
社会学的には... ブッダの模範預言に基づく特権知識人の瞑想的自力宗教です。インド宗教の大前提であるサンサーラ(輪廻転生)とカルマ(因果応報)からの解放(解脱)を知的瞑想によって達成しようとする達人的教えが仏教の中心点です。
ブッダ(565 BC-484 BC)...ルンビニ(現在のネパール)に王族(クシャトリヤ)のシャカ氏族の子として生まれる。29才で出家(妻子、地位、名誉、財産を捨てて放浪の生涯に入ること)、35才の時ブッダガヤで悟り(ニルバーナ)の境地に達する、80才で没。
初期担い手... 貴族(クシャトリヤ)知識人。
3. インド仏教の歴史
530 BC ブッダが悟りを開き、伝道活動を開始
250 BC アショーカ王(268-232)の仏教教権政治と海外伝道
150 AD クシャーナ朝カニシカ王の大乗仏教保護
300 AD グプタ王朝のヒンドゥー教保護
962 AD イスラム王朝(ガズナ、ゴール)のインド支配開始
仏教僧院の破壊・仏教徒の殺害
1200 AD デリー・スルタン朝支配
仏教がインドから亡びる、ヒンドゥー教の台頭。
1526 AD 最後のイスラム支配、ムガール帝国の確立
ヒンドゥー教指導者(グル)の権威確立
1858 AD イギリスのインド植民地化(ムガール帝国が亡びる)
4. 達人宗教性と大衆宗教性
達人は現世の関係をすべて断ち切り(出家)、自分のすべてをもって救いを行動的(禁欲的)あるいは瞑想的(神秘的)に達成しようとする。たとえば托鉢僧、修道士、伝道師
大衆は超感性的力(霊力や神仏の好意)を得るための、あるいはその呪いやわざわいを避けるための技法(儀式や呪術)を求める。または自らの苦しみを救ってくれるヒーロー(救世主)を求め、その好意を得ようと崇拝する。