世界宗教の社会学入門 第13 回 (2003/01/08)
世界宗教の起源と展開
テキスト:ウェーバー「宗教社会学」p. 4-74
1. カリスマ、霊、神
世界宗教には2つの流れがあります。一つは東洋における輪廻転生、因果応報、天の秩序(コスモス)といった非人格的な力に対する信仰、もう一つは西洋における超越創造神という人格的な力に対する信仰です。この2つは超感性的力(霊)に対する観念から流れ出たもので、さらにその源流にはカリスマ(非日常的力)信仰があります。つまり宗教の起源はカリスマ信仰にあり、そこから超感性的力の観念が生まれ、その人格化されたものが「神」と呼ばれ、その非人格化されたものが「天」や「法(ダルマ)」と呼ばれるようになったのです。
2.神観念の展開
超感性的力(霊)が有益なものをもたらし、永続的存在であり、崇拝の対象であると人々が信じるようになったとき「神」と呼ばれるようになりました。この神観念の確立には祭司の存在が欠かせませんでした。祭司は神社を建て、定まった方法で祈ったり、供物(犠牲)を捧げたりして、特定の神を崇拝し、その神の好意(力)を得ようとつとめます。祈りや犠牲(奉納)といった神崇拝の方法を「祭儀」と呼びますので、祭司とは「一定の場所で祭儀を経営する人」となります。日本の神道でもこうした神観念が展開しました。しかし、世界宗教と違い、神道には倫理と救いの教えがなく、そのような神観念が発達しませんでした。これに対して、世界宗教のユダヤ教やイスラム教には倫理的教え(たとえばモーセの十戒)があり、ゾロアスター教やキリスト教では(現世拒否を前提とした)救済の教え(たとえば最後の審判)が発達しました。この倫理と救済の教えを展開させたのが預言者です。「なぜ神道に倫理や救済がないか」と言えば、それは預言者がいなかったからです。
3.コスモス(宇宙法則)の把握
一方、超感性的力が神観念でなく非人格化の方向へ展開していったのが東洋の世界宗教です。この展開を担ったのは呪術師と知識人です。インドではアーリア人の進出以来、戦争と移動が繰り返され、一定の場所に留まることが少なく、祭司が定着できませんでした。かわりにバラモンという呪術的カリスマを持った人々が台頭し、超感性的力を身につけ操作することに関わってきました。中国でも最初の指導者、つまりカリスマを持った支配者は呪術師でした。呪術師の雨を降らせる力が黄河上流の古代国家に小麦の豊作と社会秩序の安定をもたらしました。以来中国の支配者は呪術的カリスマを持つものと信じられ、天地の超感性的力に犠牲を捧げる最高祭司の役割も独占し、祭司階級は成立しませんでした。超感性的力を「崇拝」する祭司とは反対に、呪術師は超感性的力を「強制」し「操作」しようとします。ですから呪術師が支配的な世界では神観念や祭司階級は発達せず、かわりに知識によって得ることのできる超感性的力の「法則」や「秩序」の観念、呪術師や知識人階級が発達しました。
コスモス(宇宙秩序)ははじめ倫理や救済とは無関係なものと考えられていました。道教のタオ(道)は神秘的無為的なコスモスで、そこに倫理も救済もありません。これに対して儒教のタオ(道)には倫理的コスモス(徳)は入ってきます。初期のヒンズー教のコスモス(宇宙秩序)はリタと呼ばれた儀式的秩序でした。そこに倫理的観念(因果応報)が入るとダルマ(法)と呼ばれるようになりました。さらにそうしたコスモスからの救済観念を展開させたのがブッダ(仏教)やマハーヴィーラ(ジャイナ教)の模範預言でした。